診察券発行システムの製作

 

土屋喬義1)2)、田中千恵子1)、木村一元2)

1)土屋小児病院 2)獨協医科大学小児科 3)獨協医科大学情報処理教室

 

 

土屋小児病院では医事システムとしてU-MUMPS上で動作する住友電工のアクセルを採用し、これを中心にMSMDDP接続し、医事システムよりリアルタイムに得られる情報を活用している。 23Mテクノロジー学会にてこれらを活用した院内検査システム、職員出退勤システムについて、27Mテクノロジー学会ではVB,MSMVer4.4.0,MSMActivateを利用し、Windows端末よりリアルタイムでの患者数、医師稼働率の表示、薬剤情報の自動発行、入院治療計画書の自動発行、カルテ表書き発行時に病歴、入院歴、予防接種歴などの自動印字を行などについて報告した。27Mテクノロジー学会では、MSMPDQWebを使用し、MSMよりWebサーバを介するクライアントサーバーモデルを使用した事務会計、棚卸システムと職員勤務表作成システムを報告した。

 

当院で稼動中のM関連システムは以下の通りである。

 

医事システム(住友電工 アクセル)

臨床検査データベース(MSM386)

職員出退勤管理システム( MSM−PC/PLUS )

医師稼働率表示システム(MSM for Windows NT+VB)

 

服薬指導箋、カルテ1号紙発行システムMSM for Windows NT+VB)

 

インフォームコンセント発行システム(MSM for Windows NT+VB)

事務会計、棚卸システム  

クライアントにWebブラウザを使用、MSM-PDQWebでMSMに接続

 

職員勤務表作成システム  

クライアントにMs Accessを使用、MSMーActivateでMSMに接続

 

今回医事システム(住友電工 アクセル)とVB,MSMVer4.4.0,MSMActivateを利用し、市販の安価なラミネートシールプリンタ(ブラザーPタッチ)とプラスチックカードを使ったバーコード付き診察券発行システムを作成した。

 

 

当院でのID管理事情

当院ではアクティブカルテ1万6千件と最終来院日より1年以上経過したインアクティブカルテ約5万5千件がある。 管理コストの関係上患者ユニークなID番号とは別にアクティブカルテにはカルテを収容するホルダー番号が付与されている。夜間などコンピュータ操作に不慣れな看護師等がカルテを検索するのが不便であるため患者渡す受診券にはID番号ではなくカルテが保存されるホルダー番号が記入されている。1年以上の未受診者のカルテはインアクティブとなりID番号とホルダー番号の関係が無くなるため再受診の場合は新たな受診券が発行されている。

 

 

受診券の設計

受診券を作成するに当たり次の項目に留意した。副作用情報を受診券に表示したい。受診券の表示情報を無駄なく更新したい。最低でも最初の1ヶ月に5000枚以上の受診券の発行が必要で年間1万6千枚の発行が必要であるため、可能な限り低コストでかつリアルタイムに発行したい。診察券にバーコードを印刷しシステムの発展性を保ちたい。

 以上を考慮した結果、プラスチックカードにシールプリンタで作成したラミネートシールを貼り、情報が変わった時は新なラミネートシールに貼り変える事とした。

 

 

システムの構成

当院の医事システムである住友電工アクセル(U-MUMPS上で動作)にMSMDDP接続。MSM−Activateを介してMSMVBプログラムに接続しレイアウトファイルをオブジェクトとして開き、シールプリンタに印刷した。シールプリンタは価格(標準価格39800円)、制御コマンドが公開されている、SDKが無料配布されているなどを考慮しブラザーP-touch9300pcを採用した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブラザーP-touch9300pc          

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

システム概念図

ラミネートシール、カルテ1号紙、2号紙はVBのコードで、プリンタを選択

シールプリンタで患者番号とバーコードを印刷

患者情報に関する他の入力画面でも、患者番号を受診券からバーコードリーダで読みとりが可能とした。

 

 

 

 

ラミネートシール印刷指示画面

 

レイアウトファイルはVBでオブジェクトとして認識できるよう登録が必要

 

 

 

 

VBのコードでレイアウトの各項目にMのデータを設定

 

 

 

出力シールのレイアウト

 

 

完成した受診券

 

 

まとめ

ラミネートシールプリンタは文房具として販売されており驚くほど安価であった。 イニシャルコストはプラスチックカード作成費が殆どであった。ランニングコストはプラスチックカード代+ラミネートシール代(一人当り約31円)であった。シールプリンタの耐久性は1万枚発行したときに印字ヘッドの交換を行ったが文房具としては満足すべき耐久性であると思われる。診察券に副作用情報を書き出すことにより診療の安全性が明らかに改善し、患者の評判も良好であった。

 MVBとの接続性は良好でVBをインストールするOSを選ぶことにより最新のUSB機器の使用が可能であり今後もMはデータベースエンジンとして性能を発揮し続けるものと考えられる。

 今後受診券に印刷したバーコードを中心としてさらにシステムを発展されるつもりである。