-- 医療法人土屋小児病院 -- Tsuchiya Children's Hospital -- 獨協医科大学連携病院  日本アレルギー学会認定教育施設 --


日本脳炎と予防接種

土屋小児病院

土屋喬義

 

日本脳炎は発症すると最近でも17%が死亡し、命が助かっても60%に後遺症が見られる恐ろしい伝染病です。

 日本脳炎のビールスは日本脳炎に感染した豚(症状は出ない)の血を小型アカイエ蚊が吸い、この蚊が再び豚や人間を刺すことにより伝染します。

発症率は低く感染しても発症する人は100人−1000人に一人で、以前は日本で毎年1000人―5000人の患者が出ていました。 しかし衛生環境(蚊の減少、豚の飼育場の山間部への移転)の改善と予防接種の普及により患者数は急速に減少し、1980年代は毎年数十名、1992年以降は毎年4人以下となりました。 人と豚との居住地域は離れましたが依然として日本では北海道を除く各県で日本脳炎感染蚊が発見されており、いったん発症すると高率で後遺症を残す病気であることには変わりがありません。

日本脳炎の唯一の対策は予防接種しかなく、発症してからの有効な治療法は現在も全くありません。 このため予防接種は極めて重要です

日本脳炎のワクチンは1965年以降効果が高く、極めて安全性が高い改良ワクチンとなっています。 予防接種のスケジュールは3回の基礎免疫T期 (6−90ヶ月に1−4週間隔で2回) T期追加(T期終了後1年)を行い、その後4−5年毎に追加接種を行います。

日本では患者数が激減するとともにワクチンの接種率が減少したため発症を予防するための十分な抗体価を持つ人が減少してしまいました。 このため日本脳炎の流行地区(東南アジア、中国、インドなど)に旅行する場合は前回の日本脳炎ワクチン接種より5年以上経過した場合は基礎免疫(最低2回の接種)を行うことをお勧めします。