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埼玉東部小児懇話会(発足の経緯と小児2次救急輪番制に対する取り組み)

 

平成12年1月26日

埼玉県東部小児懇話会

土屋喬義

 

 

埼玉県東部小児懇話会は栗橋済生会病院小児科の宮川三平先生の呼びかけにより平成9年7月23日栗橋済生会病院、庄和中央病院、高木病院、土屋小児病院、中田病院の各病院が参加し、北埼玉小児懇話会として発足した。 第一回の会合でこの地区の小児医療の充実を図るために小児科ベッドを有する病院が集まり、症例検討会を開催し、地域の小児医療のより一層の向上に向けて、小児救急医療充実のために連絡体制(病病連携)、また診療所の先生方を含めた病診連携について研究して行く事が決まり以後、地域の小児救急輪番体制の研究を行ってきた。この間、幸手総合病院小児科、井上小児科皮膚科、入江こどもクリニック、野口医院など医院も参加した。また平成10年1月に幸手消防署管内での救急車たらい回し事件が起こり、世論の高まりに伴い小児2次救急輪番制の制度化が行われた。埼玉東部小児懇話会は平成12年4月埼玉県で初めて全国でも極めて早い段階で埼玉県東部第一地区に小児2次救急輪番制を実施した。年間4回から6回程度の頻度で当懇話会は開催されている。

 

これまでの会の成果

1)埼玉県東部医療圏の小児時間外、救急医療の実態

土屋小児病院における夜間診療、庄和中央病院の夜間診療、患者層の分析について、高木病院の休日時間外診療についてなど各病院の時間外、救急診療の実態についての発表が行われた。この結果埼玉県東部第一地区で休日夜間時間外に病院の小児科を受診する患者数は年間1万人強である事が推定された。また救急車で搬送される小児の内科疾患の患者は年間約500件であった。救急車で搬送された患者の約半数が入院の必要があったと推定される。各病院間の夜間診療可能な日を調査したところ年間を通じ診療が全く不可能な日は殆ど存在しない事が判明した。

2)救急患者の搬送体制について。

 埼玉県東部第一地区では小児科を持つ病院で救急を行っている病院は栗橋済生会病院と幸手総合病院の2病院で2次救急指定病院となっている。しかしこれらの病院では夜間小児科医が常駐しておらず、また高木病院、土屋小児病院では医師は常駐しているものの救急指定は受けていない状態であった。このため夜間小児科が診療を行っている消防署の所轄外の地域へ情報が伝わらず、小児科医はいるものの救急搬送時に診療可能病院の情報が十分に活用されず患者搬送に支障をきたす事があった。この為、懇話会では関係する消防署とも改善策について話し合いを持った。 搬送体制(病院と消防署間の情報交換により)の改善で多くの問題が解決される事が解った。 しかし救急隊より成人の搬送システムに小児の新たな情報を乗せる事は難しく新たな情報システム構築を希望する声があがった。 当懇話会では救急隊へ内科救急疾患とは別な病院検索の手順を使うよう提案した。

3)2次救急輪番制について

 上に述べた1)2)の事項を検討して行く過程で平成9年12月に厚生省より小児2次救急輪番制が法制化された。 当懇話会でも検討してきた休日夜間、救急診療体制を取り込む事が出来るか検討を開始した。

 

1)2次救急輪番制の採用により考えられる利点

2次救急輪番制の病院群を作る事により2)で述べた救急搬送体制の混乱をなくす事ができる。

輪番病院に患者を廻す事が可能なため非輪番日に医師が休む事が可能。

 

2)2次救急輪番制の採用により考えられる不利益。(不安)

 受診者の多い休日に患者数が増加し病院の処理能力を超える可能性がある。既に年末の外来数は通常の休日の職員数では処理不能。この様な日が増加した場合職員の増員が必要となり極端に採算性が悪くなってしまう。

 非輪番日の受診者数が極端に減少した場合病院に入る保険収入が減少し、夜間診療を行う原資が減少してしまう。

 当直医の労働が過重となり医師の採用が難しくなると共に賃金の上昇要因となる。

 

以上の点を踏まえ埼玉県健康福祉部次長伊能睿先生、幸手保健所長、加須保健所長をお招きし行政と共に検討会を開催した。

 

その結果以下の点につい検討、要望がなされた。

 

1)      小児2次救急輪番制の実現(小児医療の未来を考え小額の補助ではあるが何とか実現させる)

A)輪番病院の2重化…当番病院とバックアップ病院を決める。

B)補助の対象を拡大しバックアップ病院についても補助の対象としてほしい。

2)      1次救急、時間外(夜間)診療について

2次病院担当日を必要以上に繁忙にしないため夜間診療の整備と1次救急、時間外診療を担当する病院、診療所にも補助が行き渡るようにしてほしい。(夜間診療所を作るのではなく、休日時間外受診者に対し1万円程度償還払いで補助を行う)

3)      上記目標を達成するための手続きについて

4)      今後の小児救急医療のあるべき姿について

埼玉県東部第一医療圏の小児医療はどの様に進んで行くべきか。

 

まとめ

埼玉県東部小児懇話会は地域の病院の小児科医師を中心とした勉強会で今後病院間の連携を強化する目的で発足した。 今後地域の医院の先生方とも連絡を取り、地域の小児科医の勉強、懇親の場として発展させてゆくつもりである。

 地域で小児の救急と言う事業に参加するに当たり全く手探りの状態である。 我々の病院(土屋小児病院)でも小児科の夜間休日診療は別紙に示す通り年間3000万円程度の赤字となり、また患者数も多い時には現状の職員配置では既に処理不能の状態になる事がある。 このため新たに2次救急輪番制に参加することは各病院に多大な経済的、肉体的負担を強いる可能性が高い。 この新しい制度が定着するためにも、今後経済的な基盤を早く整備する事が望まれる。

 

 

*変更履歴

 2002年10月24日 冒頭の会の成立の日時関係に誤りがあったため訂正しました。

 2003年3月4日会の成立の日時関係に誤りがあったため再度訂正しました